意識障害について
アイウエオチップスの事を理解する前に、まずは意識障害について振り返りをしておきましょう。
そもそも意識障害というのは、意識の清明度の低下(傾眠、昏睡)、または意識内容の変化(せん妄、もうろう)を認める状態とされています。
わかりやすく説明すると、普段会話していて元気だった方が、急に意識状態が悪化して会話できなくなったり、ずーっと寝た状態になったりと、普段と比べて意識状態が悪くなった。と看護師が感じた場合は、意識障害を発症したと理解しておいて問題ありません。
病棟では、意識を観察する方法としては、JCSを用いて観察していく事が多いと思います。
JCSで記録を書くと、開眼していたか、刺激で開眼したか、刺激で開眼しないのか。を大枠で理解する事もできますし、細かい所では、質問して観察していきます。
この記事では、意識障害が発生した場合、看護師がどのように原因をアセスメントすべきなのか、看護師がどのように動いたらよいのか、どのように対処していったらよいのかについてお伝えできたらいいなと思います。
意識障害といっても程度は色々ある
何が原因かわからないけれど、患者さんをみていて、とりあえず「今日は元気がないな~とか意識が悪いな~。」と感じる事はありませんか。
そういった元気がない、普段と違う様子。というのは意識障害と認識しておいてよいかと思います。
そうったいつもと違う。というのも意識障害ととらえる事ができますし、明らかに意識レベルが低下している場合なんかは、意識障害とすぐに判断する事ができると思います。
緊急性も様々だと思うんですが、意識障害はやる事がある程度決まっている事をご存じでしょうか。
シンプルにある程度、やる流れを理解しておけば意識障害が起こっても、そこまでこわくはありません。
(やり方や対応方法がわからないため怖いと思ってしまっている看護師さんもいます。)
日々の変化を記録から読み取る!
一人の看護師が、ずーっと患者さんを入院時から退院時まで受け持ちをしていた場合、意識障害の変化。は簡単に気付く事ができると思います。ずっとそばで観察しているので、会話内容だったり普段の言動や行動を観察する事ができます。
しかし、毎日同じ看護師がみる。という事は原則ありませんよね。そして、入院や退院などの出入りが多い病院であれば、なおさら日々の様子というのはわかりにくいものです。
はじめて看護師がその人を受け持ちつ場合もありえるわけです。
その人の情報というのは記録からしかよみとる事はできません。その時、以前の記録内容がしっかりと記載されていれば、日々の変化や意識の変化に気づく事ができると思います。
日々の記録で情報をとりますが、日々の変化がわかりにくいと感じた時は、わかる看護師に確認したり、JCSやGCSなどで意識障害を直接評価するようにしています。
この時に、明らかに普段の様子から逸脱していると感じた場合は、主治医に迷わず報告します!!
私は、意識障害が発生した場合は、AIUEOTIPS(アイウエオチップス)を活用して、意識障害の原因が何なのか。を把握するように努めています。
(原因を解明して診断するのは、医師ですが看護師も、アセスメントするという点では同じ思考回路で考えていく必要があります。)
アイウエオチップスはどういった場面で使われているの?
アイウエオチップスとは、救急医療の現場で活用される意識障害の除外方法です。
意識障害。とのふれこみで、救急車がサイレンをならしてERに運ばれてくる場合、意識障害にはいろんな原因がありますので、その意識障害となっている原因をひとつひとつ除外していくための方法としてよく活用されます。
ERなどの救急現場じゃないと活用できないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。
病棟看護師でも活用できますし、私もアセスメント幅が広がるため、考えながら行動してます。
(とはいっても、やる事はきまっていますので、ご安心を!!)
一般的には教科書にはあまりのっていないので、病棟看護師さんはあまり聞きなれない言葉だと思います。
でも、「急変」などの勉強をしていると、時々「アイウエオチップ」という項目を目にする事があります。
後述しますが、英語の頭文字をとって、その意識障害の原因がアイウエオチップに該当するか把握するために活用します。
AIUEO-TIPS(アイウエオチップス)とは?看護師でも理解できる鑑別診断方法!
なんども説明しますが診断や鑑別をする事はあくまでも先生です。
ですが、ただ意識障害が起こっているから、困ったな~。先生に報告しよう。ではなくて。。。
何故、その意識障害が起こっているのか看護師も一緒に考え、アセスメントすべきだと思っています。
その方が、看護師としての観察力や、アセスメント能力というものが高まると私は思っています。
(※生命に直結する急変が起こっている場合は、看護師が考えている暇はないので、スタッフ要請・先生にコールです!あくまで時間的余裕がある時に限りアセスメントして考えるという事が重要!)
英語の頭文字をとってAIUEOTIPSを覚えよう!!
アイウエオチップスの活用方法はとても簡単です。
例えば、病棟で意識障害が発生したら、その患者さんの場合は、アイウエオチップスで当てはめると、A、I、U、E、O、T、I、P、Sのどこに当てははまるのか考えます。
(救急外来では、意識障害の場合、どんな患者さんがくるかわかりませんので、アイウエイチップスでは色々と検査していく事になると思まます。)
でも、病棟の場合はある程度、診断名、既往歴、使用している薬剤、などは明らかになっているので、意識障害の原因は比較的わかりやすいのではないでしょうか。
(※スマホの場合は横スクロールしてね。)
A(alcohol)アルコール | 急性アルコール中毒 |
I(insulin)インスリン | 低血糖、高血糖 |
U(Uremia)尿毒症 | 代謝性疾患 |
E (Electrolytes)電解質異常 (Encepharlopathy)脳症 | 電解質異常、脳炎、肝性脳症、電解質異常 |
O (Oxygen)酸素 (Overdose)薬物中毒 | 低酸素血症、CO2ナルコーシス 麻薬、一酸化炭素中毒 |
T(Trauma)外傷 | 頭部外傷 |
I(Infection)感染症 | 敗血症や何らかの感染症 |
P(Psychiatric)精神疾患 | 精神疾患 |
S (shock)ショック (seizure)てんかん (stroke)脳卒中 | ショック、てんかん、脳卒中 |
こんな風に考えてみよう!!
例えば意識障害がおこっている場面で、よく私が遭遇するケースを想定しました!!以下の内容は実際にあった場面です。あなたもこんな場面に遭遇しているなら、理解しやすいと思います。
下の例は一例ですが、他にもあるかと思います。
・インスリン(I)でいえば、血糖コントロールしていて急激に低血糖が低下していて、それで意識障害が発生しているのかも。
・電解質異常(E)でいえば、電解質が異常値を示してして、意識障害を起こしていた場合もあるかも。
・酸素(O)では、既往歴に肺気腫がある場合、急激な酸素投与によりCO2ナルコーシスを起こして意識障害が発生したかも。
・まやく(O)では、癌性疼痛による痛みを緩和するためにはじめた場合、傾眠傾向(意識が朦朧としている)になった可能性があるかも。
・酸素(O)では、肺疾患の悪化により低酸素となって意識が悪化しているかもしれない。
・感染症(I)では、何らかの感染症が悪化して敗血症ショックになっているかもしれない。
・精神疾患系(P)の薬剤を飲んでいて、何らかの異変が起こって意識障害を起こしているかもしれない。
・脳卒中(S)では、急激に麻痺や呂律不良などもあって、脳卒中を起こしている危険性があるかも。
といった感じで、意識障害といっても、いろいろ原因はあります。
その人に当てはまらないものを除外していって、残るもの。すなわち該当しそうなもの。
それが、その意識障害が起こっている可能性が非常に高いという事を理解しておきましょう!!
病棟では、上にあげた『こんな風に考えてみよう』のケースが、意識障害の原因である事がほとんどです。
とはいっても、意識障害の原因はわかったけど、次に看護師は何をしたらいいのか。困りますよね。
でも、意識障害発生時は、やることって結構きまっていたりしますので、ここで覚えておきましょう。
流れを理解しておけば、意識障害はこわいもの。と認識するのではなく、何をしたらいいのか準備する事ができるようになります!!
私も実際に、この方法で動いています!!
看護師は何をしたらいい?どう動くべき!答えは簡単です!
意識障害ときくと、単純に「頭の問題?」=脳卒中??と新人であれば、考え方がかたよりがちになります。
でも、アイウエオチップスを勉強したあなたは、意識障害が、頭の問題だけではなく、色々な原因で起こっている事が理解できたと思います。
あくまでここで説明する事は、バイタルサインが安定していて、意識障害のみある場合です。バイタルサインが逸脱している場合は、急変対応のABCで対応していきましょう。
意識障害が発生したら、やる事は、まずは、バイタルサイン測定して、意識障害の評価をしっかり行いましょうね。
そして、バイタルサインが安定していて、少し時間的猶予がありそうと思った場合は、血糖測定を行いましょう。重要な事をお伝えすると、意識障害を簡易的・かつ迅速に調べる方法は、低血糖や高血糖を除外する事だと言われています。
実際に各病棟には必ず血糖測定器がありますし、迅速に測定する事ができます。
血液ガス分析を待って、血糖測定の値を待つという方法もありますが、血液ガスの機器が近くになければ、測定までに時間がかかってしまいます。
血液ガスは先生しか採取できませんが、看護は血糖測定は行う事ができます。しかも簡易的に!!!
なので、病棟看護師の方は、病棟で意識障害が発生したら血糖測定。を行うように癖をつけておくとよいと思います。低血糖で意識障害となっているケースも結構ありますし、ブトウ等などの注射が速くいけばそれだけ回復する可能性だってあるわけです。
低血糖ではないにせよ、低血糖による意識障害ではない。と除外する事ができましたよね。
では、他の原因検索をしてく事になりますが、大まかには主治医が問診したり診察したり、追加検査などで把握していく事になります。(色んなパターンがあるかと思いますが、そこは経験を踏むしかないです。)
状態悪化している時は、BLSやACLSで対応しましょう!
状態悪化している場合は、時間的猶予はありませんので、迷わずDrコールでOKです。
何が原因とゆっくりアセスメントしている暇はありませんので、すぐに治療開始のために主治医やスタッフを集めて、蘇生処置を行いましょう。
疾患や治療方針を主治医に確認しながら同時に検査をすすめていく事になります。
血圧が急激に低下しているなら、血圧を上昇するための処置を行う必要があるだろろうし、心臓が停止する場合心マッサージしなければいけない状況だってあると思います。
その時はアイウエオチップスで考えると、S(ショック)だったのかも。と思って焦ったりもします。
まとめ
この記事で伝えたかった内容は、意識障害の原因を調べる方法(鑑別にはアイウエオチップスが考えやすい。)と意識障害が起こった時の看護師の動き方。という点に焦点をあててお話ししました。
どうでしたか。私も新人の頃は、意識障害=脳疾患?と考えがかたよっていましたが、今では色々アセスメントしながら行動しています。そして、診断するのは医師ですが、それの診断をスムーズに介助するのは私たち看護師の仕事です。次に何をやるのか?次にどんな検査があるのか?次に何を準備したらいいか。少しづつ考えていく事で医師の診療の介助をスピーディーに行う事ができるようになります。
その結果、医師が診断できる時間も短くなります。
そういった一つ一つをスムーズに行う事で、患者さんが意識障害がおこった時に少しでも、早めに回復する事を願って、先回りできる看護師になっていけるとよいと思います!!
(私もまだまだ勉強過程ですが、一緒に勉強しましょう!)